この作品に於いて、歴史ある物や遺跡、そして自然は不可欠な要素である。主人公達は死者や精霊、神様と対話するシャーマンであり、そこから力を借りる事で、戦闘を行えるのである。メインキャラクターの中で、特に自然との繋がりが深いのが、アイヌのシャーマン・ホロホロである。第九十二廻から九十四廻の「ホロホロ物語」は、自然と共に生き、自然の為に戦う彼の魂を象徴する素晴らしいエピソードだ。
ホロホロは、持ち霊であるアイヌの精霊・コロロとはぐれてしまい、密猟者達から動物を守るパークレンジャーの女性・ブルーベルに拾われる。
ブルーベルは、幼い頃親を殺されてみなしごとなったアポロというグリズリーを守りたいと想い、パークレンジャーになったのだが、アポロは人間に懐かず、凶暴な性格からいつ人を襲うか解らず、人を襲った動物は殺さなければならないという苦しい立場にいる。そこでホロホロは、その身一つでアポロを説得・対話に向かうのである。アイヌ民族では、熊を初めとして、総ての動物や道具は神様であり、その間を取り持つのが自分の役割であると自覚しているからだ。アポロが凶暴になった原因も、ホロホロにはすぐ解った。人間の匂いが付いている所為で、アポロは自然界には戻れず、一人ぼっちになってしまっていたのだ。
アポロは結局密猟者に殺されてしまうが、ホロホロがその密猟者を、再会したコロロの力を使って懲らしめる。彼が一番怒った事は、アポロを殺した事ではなく、食べるでも着物にするでもない、ただの趣味として殺生をした事だった。
弱肉強食の世界には、人間もそれに含まれる。しかし、強い者が弱い者を殺すのは必要な時だけだ、という彼の哲学が、実に胸に響く。ホロホロの夢は、理不尽な強者の入り込む隙のない、大きな自然を作る事、彼の夢への想いの温かさを知るエピソードである。